マルチ商法にはまった友人と疎遠になった話

10年ほど前になりますが、高校時代の友人がマルチ商法にはまり、そのまま疎遠となったことがあります。

彼女とはクラスメイトで、たまたま席が近かったこともあり話すようになって、趣味も同じだと分かり仲良くなりました。高校を卒業後は、彼女は遠くの大学へ入学し、私はそのまま就職したこともあり、会う機会はほとんどなくなり、連絡もたまにするくらい。それでも結婚式に呼んでくれるくらいには、仲良くやれていたのだと思います。

そんなある日、仕事も落ち着いて来たころに、彼女から「遊びに来ない?」と連絡がありました。出産と育児で忙しそうだった彼女からのお誘いに、嬉しくなってお土産を持って向かったところ、昔話や雑談をそこそこに、なぜかキッチングッズの話になったのです。

このキッチングッズは使いやすいとか、これをおすすめしてくれた人の料理教室へ行って楽しかったとか、旦那に内緒で買ったら喧嘩になったとか。昔はゲームやアニメの話ばかりしていたので、大人になってったんだなぁと、自分だけ取り残されたような寂しい気持ちも感じつつ相槌を打っていたのですが……だんだん変な方向になってきました。

「いやなら無理には誘わなんだけど、一回だけいいから見に来ない?料理教室、楽しいよ。私もそこで皆と仲良くなれて楽しい」

彼女は笑顔でそう言うのですが、話を聞いていると、そこでキッチングッズの購入を契約したそうです。そして「あなただから言うんだけど……」と前置きして、契約をとるとお金がもらえる。副業なんだよ、とまで言われてしまい……。

その時は笑って「仕事が忙しいから」とやんわりお断りをしましたが、正直に言いますとショックでした。彼女の中では、私はもう友人の括りではなかったのだなと。もちろんそこまで頻繁に連絡を取り合ってはいないので、友人から知人という認識になっても仕方ないとは思いますが、とにかく悲しかったです。

職場の同僚に話をしても「友達なんだからそのくらい言ってあげてもいいじゃない?」と言われましたが、私はどうしても頷けませんでした。友達と遊びたくて行ったら勧誘のお話だった衝撃から、どうしても抜け出せなかったのです。

それから、その子との連絡もぱったりしなくなりました。向こうからも特に来ることはなかったので、やはり私は友人ではなかったのでしょう。今まで元日に届いていた年賀状も、私が出したらお返しする、という形へ変わってしまっておりましたので。返事も、そんな感じでしたね。しっかり家族写真の載った年賀状を見ながら、除外となってしまったことに寂しさやら何やらを感じながら、私は彼女の連絡先を諸々から消しました。見るだけでダメージを負ってしまうので、それならば、目に入らない方がマシだと思ったのです。

人間はいつまでも同じままではいられないし、ずっと変化する生き物です。私もそうです。今回はマルチ商法というきっかけで、友人と疎遠になってしまいましたが、他にも何かしらの積み重ねがお互いにあったとも思います。あれから何年も経っていますが、それをしている会社の名前を見るたびに、胸がちくちく痛んで苦い気持ちが沸き上がります。

感情の理由が強いですが、そういう事情で私は友人と疎遠になり、そのきっかけとなったものも、今も好きではありません。

もしもあなたが、マルチ商法に手を出そうとしているのならば、友人や親族を勧誘するのだけはやめておいた方が良いです。一時のお金は手に入っても、信用も信頼も、全部なくなってしまうかもしれませんから。